事例1:14歳 男子
競技スポーツ:サッカー
スポーツ歴
小学2年生より
サポート期間
サポート開始時の相談内容
ご両親より、身長は同じクラスだと高い方だがあまり運動神経が良い方ではないとのこと。本人はサッカーが大好きで中学でも続けて行きたいとのこと。できる限りのサポートをしてあげたいので、医学的なバックアップをお願いしたいのと、今の身長は高いが両親がそれほど高い訳ではないので、成長期が早くきているだけなのか?など相談したい。
ご両親からの予測身長:172cm
サポート内容
サポート時に必要な物:保管されている成長に関する記録を全て持参下さい
事前にお子さんにどのような相談に行くのか?を伝えて頂きます
初回の注意点:お子さんに何をするのか?が伝わっていないケースでは採血などを行わないことがあります
初回の内容:カウンセリング(現在の身体の状態把握(予測身長)、競技レベルの確認、目標設定)
レントゲン撮影(手のレントゲン(骨端線の確認))
追加検査の内容:希望時には採血(発達段階の評価、運動中のトラブルを予測するため心疾患や甲状腺機能、貧血を含む)
実際のサポート内容:
小学5年生
小学6年生
中学1年〜2年生
カウンセリング内容:成長曲線から同学年としては比較的身長が高く、体格も大きい。ご両親の印象としては球技はそれほど得意な印象はなく、サッカーチームも地域の少年団に入っており、地区大会などでは1回戦敗退がほとんどのチームで、特別活躍はしていないとのこと。足は比較速い方で、小学校ではリレーの選手に選ばれていることが多い。
医学的には、病的な早熟である「思春期早発症」のおそれはないが、成長期が早く来るタイプである可能性はあるため、採血・レントゲンなどをご提案。本人は、サッカーが大好きでどうしてもJリーグの下部組織に入団したいと思っているため、採血なども頑張るとのことで同日検査を行った。
1週間後に採血結果を報告(本症例についてはご本人も聞きたいという希望が強いため、ご両親と共に来院)。採血結果(別紙参照)から、ソマトメジンが高く(成長ホルモンの指標)、骨代謝(ALP)も上昇しているため、二次性徴準備期に入っていると確認。2ヶ月毎の採血も提案し、二次性徴の入口を正確に把握し、身長が伸びる時期を同定することとした。
また、運動能力については、GPSデータを確認し、試合での運動量と直後の乳酸を測定すると本来のパフォーマンスが出せていないことが判明し、普段のトレーニングから負荷量を増やすことをご提案(成長期が早くきているため同年代の子と同様のトレーニングだと運動量が不足していると判断)。
また、エアロバイクを用いたビュレットトレーニングにより、足の回転速度と運動継続能力が同年代に比べて低下傾向にあることがわかり、低酸素トレーニングによる運動継続能力の向上が競技レベルを上げてくれる可能性をお伝えした。
二次性徴はおよそ小学6年生の夏頃から訪れることを予測し、それまでに効果的に必要なタンパク質を摂取できるように胃腸のトレーニングも同時に行うようお肉(鳥など)、魚などの摂取量を増やすようにご家族へお願いした。
5年生より取り組んできた低酸素トレーニングと運動継続能力向上及び、本症例は食事をトレーニングの一環と捉えてくれたおかげで食事で摂取できるようになったタンパク質の量と質が飛躍的に向上したため、身長も大幅に伸びることとなった。それに合わせて、サッカースクールなどでも活躍できるようになり、選抜に選ばれたり、海外遠征のチームに選ばれるなど多くの経験を積めるようになり、自己肯定感が高まっていったとのこと。
また、当初の目標であったJ下部組織の入団も9月に果たすことができ、我々の成長のタイミングに合わせたサポートができた症例であった。J下部組織入団決定直後、スクールの練習中に手首を骨折してしまったため、当院の付帯設備である酸素カプセルを利用してもらい、早期治癒につなげ、手術が必要な骨折であったが1ヶ月半で実戦復帰までこぎつけている。
小学6年の終わりから中学1年にかけて身長の伸びとともに、定期採血にて潜在性甲状腺機能低下症を認めたため当院で治療を開始(成長が著しい子の一部に潜在性甲状腺機能低下症を発症することが最近、アスリートの報告も出てきており、これにより予測身長に到達しないケースがあることも示唆されている)。これにより、現在中学2年で175cmを達成しており、採血上もALPが高く、ソマトメジンも高く推移しているため、180cm程度まで予測身長を上方修正している。最新の情報としては、次のシーズンからはスペインの下部組織に入団することになり、海外留学の予定になっている。